お知らせ

『住民の合意形成』

 

 雨が降る度に大雨や洪水など「水害リスク」のことを考え、自然災害の脅威にさらされる季節が今年も到来したなと感じています。

 自宅横の金勝川の河川水量を見るにつけ、「ダムや堤防に依存しない治水政策のあり方」について改めて熟考しています。

 国では先般、河川の流域全体で災害を防ぐための『流域治水を推進する法律』が成立されました。

 その国に先んじて、滋賀県では前知事のもと県議会で連日のように熱い議論が交わされた末、『滋賀県流域治水の推進に関する条例』を平成二十六年三月三十一日に公布されました。

 浸水の危険性が高い場所への建設や制度の対象を広げ、個人や公だけでなく企業にも水害リスクについて意識づけをお願いする今回の我が国の法律成立は、ヨーロッパ先進国に追いついた快挙ともいえます。

 近年の豪雨災害の現状や洪水発生が今後も常態化することに国も強い危機感をもって重い腰をあげざるをえなかったといった背景があるのは明白でしょう。

 巨大構造物によるダム等のハード整備だけではなく、ソフト対策とあわせた深く広い知見、長期的な視点での『総合治水政策』へと国も舵を切ったことは今後の我が国の治水政策にとっても目を見張るものがあります。

 こうした総合的な流域治水を、全国に先駆けて提唱してきたのが「湖国・滋賀県」なのです。

 既に県議二期目であった私は流域治水政策には広義で賛成しつつも、ダム建設による集団移転を余儀なくされた方々の当時の現地での発言や生活に胸を痛め、

 「個人の財産や当事者への経済的負担を行政がしっかりときめ細やかに将来まで支援してこその政策転換であり、住み慣れた土地や生活を離れ、田畑を手放し、先祖代々愛着をもって暮らしてこられたふるさとに対する住民の理解が一義であり、住民合意形成を丁寧にすべきだ」と訴えました。

 

 

 

 当時、齢(よわい)四十三歳。

 若輩ながら選出されていた地元栗東市の新幹線新駅(栗東駅)問題の地権者の方々の新駅凍結への政策転換による悲痛な叫びを連日連夜きいていた後の、ダム問題だった故同じ県のビッグプロジェクト事業として言わざるをえなかったのです。

 「新駅もダムも自分事として考えているのか」自問自答を繰り返し、地権者の方々の声を我がこととして真摯に拝聴すべきだと胸に刻んだ記憶が鮮明に蘇ります。

 ダムに代わる新しい水害対策の実効性を当事者に理解してもらうためには、行政によるそれなりの時間と説明がなにより不可欠です。

 なぜなら、住民の合意形成や協力なくして新しい政策をすすめることはできないからです。

 滋賀県の大戸川ダムと同様に、地元栗東市にも新たな企業誘致、火葬場・環境センター等々大きなプロジェクトが迫っています。

 時間に追われるのではなく、住民と行政がじっくりと時間をかけて話し合ってこそ住みやすく災害に強い安全で安心なまちが構築できるのです。

 利便性や経済性ばかりに目を奪われるのではなく、住民主軸の、住民のための、住民への説明責任力が試されている昨今です。 (拝)