お知らせ

『ペンは刀より強し』

 「人間は失敗や愚行を繰り返す生き物である」

 『知の巨人』と言われ、歴史・哲学・文学から自然科学まで幅広い分野を生涯学び、多種多様な著書を発表されてきた立花隆さんが先日、お亡くなりになりました。

 私が、氏の名前をはじめて知ったのは中学一年生の時です。

 昭和五十一年七月二十七日。

 親戚の叔父さんや従兄に連れられ、阪神甲子園球場レフト側外野席で夏の高校野球を観戦していた中学生の私は、当時満員だった観客席に突然、朝日新聞の『号外』が大量に配布され、周囲の大人達が顔を見合わせていた光景にただならぬことが起こったのを察したことを覚えています。

 『田中角栄総理逮捕』の大見出し。

 当時の現職総理大臣であった大物政治家が、「外為法違反・受託収賄罪」により逮捕されたことに球場全体が応援を忘れ、しばしどよめいていました。

 逮捕のきっかけとなったと言われているのが、立花隆さんが著した「田中角栄研究-全記録-」です。

 当時、十三歳だった私は、「日本一力があると思ってきた総理大臣でも悪いことをしたら捕まるんだ」と、周囲のざわめきと同時に、驚いたことを今も鮮明に覚えています。

 あれから半世紀近くが経過し、この間も多くの政治家が収賄罪で逮捕されてきました。

 「議員バッジつけたら、ついつい独善的になるし自省しいや」

 「先生、先生、と見ず知らずの人が寄ってくることもあるで」

 「人と金には十二分に気ぃつけや」

 初当選後すぐ、事務所にお祝いに駆けつけてくださった先輩議員から諭された言葉が今も脳裏に浮かびます。

 「危機を察知し、小さな失敗のうちに、大きな失敗の芽を摘んでいくことが非常時には大切です」

 尊敬するジャーナリストの一人、故立花隆氏の言葉と同時に、新型コロナにより日常生活が大きく変わった今だからこそ、改めて深く胸に刻んでいる「半夏至の夜」です。

 ご冥福をお祈りいたします。